「君が踊る、夏」見たよ


プロのカメラマンになる夢を胸に東京で修業に励む新平(溝端淳平)。かつて一緒に上京する約束をしていた香織(木南晴夏)は、上京の直前に、妹のさくら(大森絢音)が難病にかかっていることを知り、東京行きを断念する。5年後、医師から「これが最後の夏になるかも…」と告げられたさくらは、かつて新平や香織が所属していた伝説のチーム「いちむじん」で死ぬ前によさこいを踊りたいと胸に秘めた夢を語る。香織はさくらの願いを叶えるべく、かつての仲間の元を訪ね歩く。そんなある日、高知に戻っていた新平と再会し…。

『君が踊る、夏』作品情報 | cinemacafe.net

宇都宮ヒカリ座にて。


初めてこの作品の予告を観たときに「こういうお涙ちょうだい系の作品は誰が観るんだろう」と思うくらい、自分ではまったく観る気の起きない作品でしたが、それでも何となく気になるものを感じていたのかついつい観に行ってしまいました。


で、結論から書くと、意外や意外、なんと超面白かったのです。
決して過剰に涙を誘おうとするだけの作品ではなく、むしろ笑わされ過ぎて腹筋が痛くなるくらい笑える内容でしたし、だからといってくだらないだけではなくてジーンとくるシーンもしっかりと撮られてあって、その緩急の切り替えというか両者のバランスがとても絶妙で、上映時間の2時間はまったく飽きることがなく鑑賞出来ました。本当にすばらしい作品でした。もう一回観に行きたいです。


さて。世の中には「日テレの24時間テレビは偽善っぽい上に感動を売り物にしていて嫌い」という人が少なからずいるようでして、番組放送中はネットのそこかしこでそのようなことを発言する人を見かけることが出来ます。ちなみにわたしもそのように感じる一人なのですが、昔のことは知りませんが、生まれた頃からテレビが当たり前にあり日常的に情報を浴びて育った年代の人たちというのは自分の好き嫌いをかぎ分ける嗅覚が並大抵のレベルではなくて、どんなにささやかな要素であっても自分が嫌いな方向性を感じ取る事に関してはかなり敏感です。
だから、安易に感動を売りにすることはメリットよりもデメリットが大きいと思うのですが、結構安直に死ぬことを題材に組み込んで泣ける作品だということをアピールしちゃう作品ってどうしてもなくならないんですよね。絶対受けるはずがないのに、なぜ安っぽい感動を売りにしようと思うのか理解に苦しむなと思っていたのですが、その点についてはこの作品は非常にバランス感覚がすぐれていて、感動させようという匂いがほとんどしないんですよね。もしかしたらわたしの鼻が詰まってるだけかも知れませんが、でも安易に感動をさせようという意図はわたしにはまったく感じられなかったです。
その上で、どうやったら悲観的になり過ぎずに事実を伝えられるのかということをとてもうまく練り込んでいたなと思うし、その「悲観的になり過ぎない」ためのファクターとして笑ってしまうような演出がすごく活きてたと感じるのです。


ちなみに上述のとおりこの作品では結構おかしな演出を組み込んでいたのですが、その中でも特におもしろかった演出についてまとめてみました。

物語の中盤でさくらの父親が「娘が病気なのは俺の業かも知れない」と言い残して行方不明となる

娘が病気で死にそうだって言ってんのに旅に出ちゃうって...。
すっかり父親のことを忘れてたラストのよさこいのシーンでホームレスみたいな姿で現れる。

石黒(DAIGO)のキャラがいろいろとおかしい

新平の携帯に電話がつながらないからと言って実家に電話する石黒。
実家にも新平が不在とわかると、新平のお母さん(宮崎美子)を口説く石黒。意味が分からない。
石黒はとにかくチャラチャラしたキャラがツボ。
石黒はDAIGOとしての持ちネタも使う。映画でティッシュティッシュ、ウィッシュって...。
「新平、しんぺー(心配)したよ」というギャグはくだらなすぎて吹いた

小学校のグラウンドで練習する新平たちの下に司がいちむじんのメンバーを集めて駆けつけるシーンの演出がおかしい

乗り合わせてくればいいのに、なぜかひとり一台ずつ車に乗ってやってくる
まるで暴走族のように車が連なって小学校への狭い道を走ってる絵がかなりおかしい
全員集合シーンでポーズをとってかっこつけてる女がいる。あのポーズはやばい。
そもそも全員集合シーンの統率の取れっぷりは明らかにリアリティがない。練習し過ぎ。そこ、頑張るとこじゃないよ。

ラストシーンの川沿いで向かい合って踊り狂う二人の姿があまりに異様。怖い。


こうやって書くと作品をバカにしてるみたいな気がして嫌な気分になるのですが、でも全然そんなことはなくて、こういった演出があったからこそ「嘘っぽくない」「偽善ぽくない」「悲壮感が漂わない」、つまり感動を売りにしていない作品として観ることが出来たとわたしは思っています。DAIGOなんて最初出てきたときは「こいつふざけてんの?」とか思ったくらいイラッとしたのですが、途中から彼無しではこの作品はありえないと思うくらい大事な役割を担っていました。


ちなみにこの作品のヒロインを演じていた木南晴夏さんですが、正直彼女がキャストされた理由だけはよくわからなかったです。
男子二人からモテモテという役どころにふさわしいかというとそうは感じなかったし、全体的に観てもイケメン過ぎるくらいかっこいい男性陣に比べてかなり女性側のバランスが悪かったように感じました。木南さんも踊ってる姿はかなり様になってたし、踊ってるときはたしかにかわいいような気もしたのですが、でもほとんどは踊ってないシーンなんですよね....残念ながら。


何だか何の感想書いてるんだかさっぱりわからなくなってきたのですが、とにかく楽しかったのでまた観に行きたい作品です。


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