「ニュー・シネマ・パラダイス」見たよ

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [DVD]

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [DVD]

ローマに住んでいる映画監督サルヴァトーレは、故郷のシチリア島の村からアルフレードが死んだという知らせを受け取る。30年間故郷に帰っていないサルヴァトーレは少年時代の回想を始める。戦争で父を亡くしたサルヴァトーレ(愛称トト)は映画に魅了され、村の映画館「Cinema Paradiso」をのぞき見しようとして、映写技師アルフレードに近づく。やがて二人の間には友情が芽生える……。

ニュー・シネマ・パラダイス - Wikipedia

TOHOシネマズ宇都宮にて。午前十時の映画祭にて鑑賞(20本目)。


映画館という場所が今と違って人々のコミュニケーションの中心にあった時代を描いた郷愁漂う作品でした。
現代の人たちがテレビを見るような気軽さで映画を観ていた時代には当然今とはけた違いに多種多様な人々が映画館には集まっていて、そこには数多くの物語があったことを本作は丁寧に描いています。今では「映画を観ている時はおしゃべりしてはいけない」とか「携帯を使ってはいけない」とか、とかくたくさんのルールが敷き詰められていて、気軽に楽しめるエンターテイメントという側面はかなり失われています。
もちろん数多くのルール自体は多くの人が快適に映画鑑賞をするために必要なものですし、実際映画を観ている時に横でおしゃべりを始められたら5秒でぶちギレるであろうわたしのような心の狭い人が周囲に迷惑をかけないためにもルールそのものの必要性は理解しているつもりです。ただ、そのルールを重んじすぎるあまりにエンターテイメントを楽しむための大きな要素である気軽さというものがかなり損なわれているのも事実でして、テレビ・DVDの普及というのは「映像をより気軽に楽しめる手段」として優れているからであろうと思うわけです。
一度楽を覚えた人間は決して後戻りは出来ませんから、映画が"気楽に楽しめるエンターテイメント"という役を担うことはもう無理だろうと思うとちょっと寂しい気もします。
# とは言え、子どもが走り回ったり頭の上から唾が飛んでくるような映画館は嫌ですがw


かなり話がそれてしまいました...。
作品全体の感想を述べると、たしかに印象的なシーンは多かったものの率直に言ってそれほど目立った作品だと感じませんでした。「なるほど、こういう作品なのね」と冷静に全体を見直しながら観ていたわけですが、そのわたしの認識が甘かったことをラストシーンで嫌というほど思い知らされました...。
忘れていた大事な人との約束が何十年もたった今でも相手の心の中にちゃんとあると知った時の幸せに満ちた気持ち。それは言葉では語りつくせぬほど大きなものでして、そのあまりのインパクトの強さに茫然としてしまいました。
「冒頭でちょっとだけ出ていた会話がラストで活きてくるという演出がすばらしい」と言ってしまえばそれだけなのですが、その一言で片づけるにはもったいなさすぎるくらい印象的なシーンでした。あのシーンだけで、この作品に対する評価は一変してしまいました。


観終わった後の余韻が、一日経ったいまでも頭から消えません。