- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: DVD
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高級車のディーラーをしているチャーリー(トム・クルーズ)のもとに父の訃報が届く。遺産目当てに故郷にかえったチャーリーは遺産のすべてが、会ったこともない自閉症の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)のものになると知る。遺産を手に入れようと、チャーリーはレイモンドが入所している施設から強引にレイモンドを連れ出し、ロスに戻ろうとするのだが・・・
レインマン - Wikipedia
TOHOシネマズ宇都宮にて。午前十時の映画祭にて鑑賞(19本目)。
当たり前ですが、他人というのは自分とはまったく違う人間なわけですから「性格が合わない」とか「考え方が受け入れられない」、もしくは「容姿が苦手」などなど、何かしら気に入らない部分というのがあります。このことは家族も決して例外ではなく、むしろ血縁者だからこそ気に食わないことや許せないことだってあるわけです。
世の中にはそういったささやかな不適合は気にしないおおらかな人もいるようですが、わたしみたいな器の小さい人間はそういったミスマッチが結構気になってしまいます。仕事関係の付き合いがあれば、何とか妥協点を見つけてようと努力もするのですが、そうでない関係の人のことであれば極力関係を断ち切ってもう関わらないようにしようとするのです。日常でそういう面倒なストレスはちょっとでも感じたくないと思ってるんですよね....。
さて。本作を観た感想ですが、冒頭から中盤にかけて父の死にすら興味を持たない強欲でわがままなチャーリーと、自閉症のために頑なに自らに定めたルールを守ろうとするレイモンドにイライラしてしっぱなしでした。まさにわたしとは価値観も考えも合わない人たちの物語なわけですからそんな人たちのことなんてどうでもいいよという気になりそうになったのですが、物語が進むにつれて二人が徐々に兄弟であることを受け入れて絆を深めあっていく様子に気づけば作品の世界にどっぷりと入りこんでしまいました。
「何がこの兄弟の仲を取り持ってくれたのか」「何がお互いの存在を許しあえるようになるきっかけとなったのか」ということについて考えてみたのですが、"とにかくずっと二人で一緒にいること"を貫き通したことがよかったのだと思うのです。どんなにうんざりすることがあっても、離れずに一緒にいることを選び続けたことが功を奏したのだと思います。
そもそも、他人とずっと一緒にいることっていいことばかりではなくて、むしろお互いの嫌なところや合わないところが次々に見えてくるわけですから、好きな人を嫌いになることだってあるし、嫌いない人のことは余計に嫌いになることだってあるわけです。結婚して一緒に住んだ途端、「まさかこんな人だと思わなかった」と言い出す人がいますが、まさにこの例にぴったりの事例です。
ずっと一緒にいたら相手の嫌なところがたくさん見えるのは当然なのです。
ところがそういう相手の嫌なところが全部見えているときというのは、逆に自分の嫌なところも全部見られているんですよね。つまり自分が相手の嫌なところを見てうんざりしているのと同じくらい、相手だって自分の嫌なところを見てうんざりしているわけです。
ここからはわたしの個人的な感覚に基づいているのですが、この「相手が自分の嫌なところを含めて全部見ている」ということを意識しだすと、その人との関係というのは意外なほどスムーズになります。変な言い方になりますが、「相手に対して見栄を張らなくていい」とか「見られたくない部分なんてもうない」という諦観からその人と付き合うことがとても楽になるんですよね。そして楽になると関係を維持することにストレスを感じなくなります。
もちろんそこに至るまでの間に決定的に付き合いたくないと思う人もいるわけで、誰とでもそういう関係になることが出来るわけではありません。この作品のように「家族であること」が絆となってうまくいく場合もありますし、もっと複雑な要因が絡んでくる場合もあります。
だから誰とでもずっと一緒にいたら仲良くなれるというわけでもないのですが、だからこそ一緒に長距離を旅することが出来る他者というのはすごく大事な存在だとしみじみ感じました。
ロードームービー自体、すごく好きなんですが、こういうジワジワと人間関係が塗り替えられる作品は大好きです。