「ユキとニナ」見たよ


フランスで暮らすユキは10歳。フランス人の父と日本人の母の子供だが、最近、両親の仲が良くない。ある日、両親が離婚し、母がユキを連れて、日本に帰ろうとしていることを聞いてユキはショックを受ける。ユキは親友のニナと共に、両親を仲直りさせるために、2人に手紙を出したりするが、なかなか上手くいかない。何とか手はないかと考えたユキとニナは、ついに家出をすることに…。

http://www.cinemacafe.net/movies/cgi/22453/

桜井薬局セントラルホールにて。


わたしには2歳と5歳になる娘がいますが、彼女たちの言動や行動を見たり聴いたりしても2人がいったい何をどう考えているのかさっぱりわかりません。すり寄ってきたかと思えば全力でわたしから逃げようとしたり、何気なくいった一言で泣き出したかと思えば、こっぴどく叱っても意に介す様子もなくシカトしてみたりと、何を考えているのか、どういうつもりなのかさっぱり理解できないのです。


考えてみれば、わたしだって子どもの頃は親の考えていることなんてほとんど理解できなかったような気がするし、そのせいかいつも怒られていたような記憶ばかり残っています。そして子どもたちから見たら、もしかして自分もそういうふうなよくわからない存在に見えているのかも知れないなと思うのです。


この作品は本当におもしろい作品でして、見ていると自分が子どもの頃にしてしまったひとつひとつの行為(特にあまりよくないことばかり)を思い出してしまいます。
たとえば6歳の頃に近所の畑のにんじんを全部引っこ抜いて埋めなおした*1ことや日常的に怒られるのが嫌でお菓子を持って裏山の奥に家出したこと、先生から「机の中が汚いのでもう少し整理整頓を心がけましょう」と書かれた連絡帳を親に見せるのが嫌で隣の家の庭に埋めたこと*2や担任の先生が「好き嫌いはいけません」といつも言ってたのに自分は苦手な鶏肉の皮を食べずに捨てていたのを偶然見てしまい思わず校長先生に手紙を書いて告げ口したことなど、今思えばいったいなぜそんなことをしてしまったのかまったく理解出来ないことばかりしていたを思い知らされます。


でも、過去の自分を正当化するわけではありませんが、子どもというのはそれまでの経験がない分、自分自身の直感に頼ってさまざまな決定を下しているために、大人から見たらいくぶんおかしなことを言ったりしてしまったりする存在なのです。これはもう間違いありませんし、そう考えると、そういった稚拙だったり幼稚な行為にこそ子どもたちなりに考えた結果が詰まっているように感じられてとてもいとおしく感じられるのです。


本作でもニナやユキが取った行動というのはまさに彼女たちが大人に頼らずに自分たちだけで考えた結果であり、そのいずれも大人から見たら「それはないなー」と思うことばかりです。ユキの両親が離婚しないように"愛の妖精"を騙って手紙を書くとか大人だったら絶対に考えないし、仮に思いついても行動しませんが、ユキとニナはそれを実践してしまう。その行為は大人から見たらとてもいとおしく見えるのです。
母親は一目みただけでユキたちからきた手紙だというのがわかるけれど、でもそれを決していうことはせず、その手紙に隠されたユキの離婚して欲しくない気持ちをしっかりと受け止める。その気持ちはわたしもすごくわかるし、もし彼女の立場だったらわたしも子どもたちには何も言えないと思うのです。


そんな子どもたちの世界に連れ込まれてしまったように感じられたし、全体をとおしてとても静かで穏やかな美しさにたたえられたすばらしい作品でした。


公式サイトはこちら

*1:すぐにばれて両親や近所の人たちにものすごく怒られました...

*2:これは一週間くらいはうまく隠し通したんだけど、応答がないことをいぶかしんだ先生から電話がきて連絡帳がなくなっていることに気付いて発覚してこれまた超怒られた