「日傘のお兄さん」読んだよ

日傘のお兄さん (新潮文庫)

日傘のお兄さん (新潮文庫)

それは突然だった。保育園の頃、毎日遊んでくれた大好きなお兄さんが、中学生になった夏実の前に現れた。「追われているんだ。かくまってくれないか」なんとお兄さんはロリコン男としてネット上でマークされていて!?こうして、夏実とお兄さんのちょっとキケンな逃避行が始まった―。可愛いだけじゃない。女の子のむきだしの想いが胸をしめつける、まぶしく切ない四つの物語。

http://www.amazon.co.jp/dp/4101199426

豊島ミホさんは毎回いろんな切り口で変な話*1を書かれていて、いずれの物語もとても面白くて感心させられますし、さらに視点が常に女性的であることもよく意識させられます。主人公が女性であることが多いとかそういうこと以上に、視線がものすごく女性目線なんですよね。うまく言えないのですが、少女マンガ的というか、男でいる限りはなかなか思いもつけないようなことがさらりと提示されるとそれだけでギョッとしてしまいます。
さらに住む場所/思い出の場所...etcとさまざまな形で田舎というものがよく入り込んでくるのも豊島さんのつむぐ物語の特徴であり、それがまたわたしにはとても魅力的に感じられるのです。


本書はそんな著者の魅力がちりばめられた短編4作品が収録されていて、とても満足できる一冊でした。
4作品いずれもまったく別々の話なのに、並べてみると「これは絶対豊島さんの作品で間違いないね」と納得出来るところがおもしろいというかなんというか。ストーリーに共通項があるのではなく、作品の空気に共通した何かがあることにとても感銘を受けました。


繰り返し読みたくなる本なので、すぐに手の届くところに置いておいていつでも読み直そうと思います。

*1:言い方が失礼な感じになってしまいましたがとてもユニークだということです