「サロゲート」見たよ


リモート・コントロール型の身代わりロボットが人間の役割を代行する未来社会。人間は自宅を一歩も出ることなく、自分の理想の姿をしたロボットの行動をバーチャル体験し、完璧に安全な人生を送ることができる。だが、ロボット・システムの関係者の殺人事件をきっかけに、このユートピアは根底から揺らぎ始める…。

『サロゲート』作品情報 | cinemacafe.net

TOHOシネマズ宇都宮にて。


本作は「ロボットに自分の日常生活の面倒/リスクをすべて肩代わりさせられたら...」なんていう義務教育を終えたくらいでさっぱり忘れてしまっていた妄想を映像化してくれた作品なのですが、舞台が近未来であることを自然と想起させる風景や時代背景の描写/説明がとてもよくて、冒頭から自然と物語の中に入り込めました。現代との違いやそうなった経緯についての説明があちこちでされていてとてもわかりやすかったのがよかったです。
上映時間が90分と短い作品でしたがとても満足できる作品でした。


本人は自宅で寝ていながら脳から命令を送ることで思いどおりに操作することができ、さらにその操作対象が受けた良いフィードバックはすべて甘受し、不快なフィードバックはすべて拒否できるという夢のような機械。それがこのサロゲートという代理ロボットの役割なのですが、これってインターネットの仕組みとすごく似てるんですよね。
ネット上ではコミュニケーションはすべて自分の作成したIDやハンドルネームを介して行いますが、そのIDやハンドルが行った発言への賛辞は自らへのものとして受け止めることで快感をおぼえ、不用意な発言に対する糾弾は適当にスルーすることで傷つかずに済みます。
このインターネットの便利さ/快適さをより人間の欲求を満たす形に膨らませていけばそれがサロゲートになりそうだと思いながら観ていました。


もしこのサロゲートがネットの便利さの先にある姿だとすれば、わたしはそれに対して肯定的な感情を示せるはずだと思っていたのですが意外にも「こんな世界は嫌だな」というのがわたしの率直な感想でした。もちろん怪我を心配せずに好き勝手に動き回れるのは便利そうだし、自分の容姿を選べるのはいいなーと思わないこともなかったのですが、それでもやはり受け入れられない感情が先に出てくるんですよね。この作品がそう感じさせるような演出を多用していたこともひとつの要因ではありますが、それよりもわたしがトムや自治区を作ってサロゲートの使用に抵抗していた人々と同様に、人間は自分の体で体験したことを大事にすべきだという価値観にとらわれた人間だということが大きいんだと思うんですよ。
いずれサロゲートのようなものが発明されて多くの人がふつうに使う時代が来たときには、この作品が示したような考え方は笑いものになるかも知れないなーと感じました。


遠くない将来におとずれる未来に対する思考実験として、ひじょうに良く出来た作品でした。


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