
- 作者: 豊島ミホ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2009/03/12
- メディア: 文庫
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漫画家になる夢をもつアヤコと、ミュージシャンを目指すシン。別々の高校に進学することになったふたりは、中学校の卒業式で、10年後にお互いの夢を叶えて会おうと約束をする。そして10年。再会の日が近づく。そのとき、夢と現実を抱えて暮らすふたりの心に浮かぶものは…。単行本刊行時、大反響を呼んだ青春小説の傑作がついに文庫化。恋と夢と現実のはざまで揺れ動くあなたに贈る物語。
http://www.amazon.co.jp/dp/4575512664/
エバーグリーンという言葉には常緑樹という意味があります。
わたしが高校3年生だった14年くらい前に、当時から大好きだったMy Little Loverがファーストアルバムを出したのですが、そのアルバムのタイトルが「ever green」でした。
わたしはこのアルバムがあまりに気に入ってしまったためにタイトルの意味まで調べ出す始末でしたが、そのおかげでこの言葉の意味は今でもちゃんと覚えていますし、耳にするだけで10代の頃を思い出してはやけにセンチメンタルな気分になってしまいます。
常緑樹というのはその文字のとおり葉を枯らさずに保ち続ける植物のことなのですが、中学を卒業するときにした大好きだった人との大事な約束を自らの心の中に持ち続けたアヤコはまさに常緑樹と同じであり、10年近くその想いを枯らすことなく温め続ける姿にグッとくるのです。
10年間、再開する日に向けて日々努力を続けたアヤコと、10年後の約束は覚えていたけれど日常に流されて語った夢から遠ざかってしまっていたシンの対照的な姿というのはすごくリアリティがあるんですよね。すごく分かるなーというか、ひとつひとつの展開が自然と腑に落ちるように描かれていて読むのが楽しく感じられました。
本書はわたしが今まで読んだ本の中でも指折りの傑作と言っても過言ではないくらいにすばらしい作品でした。
直前に豊島さんのエッセイを読んでいたことが、この作品が著者自身の経験の中から生み出されたキャラクターによって紡がれていることが感じ取れたのですが、そのことがこの作品の魅力を高めてくれたように感じます。
これ、夏休みに読みたかったなあ。