とある小さな田舎町で働いている青年・史郎の日課は、毎日1時間だけ仕事を抜け出し、父親が入院している病院へ通うことだった。だが、そんな矢先、思いもしない不測の事態が史郎を襲う。実は、史郎の体も病に犯されており、父親より病状は悪く、余命も短い…。史郎は、家族や恋人のことを思うばかりに、自身の病のことを誰にも打つ明けられず狼狽するのだった――。監督は、『愛のむきだし』で第59回ベルリン国際映画祭の国際批評家連盟賞&カリガリ賞をW受賞した園子温。EXILEのパフォーマーとして活躍するAKIRA初主演作。
『ちゃんと伝える』作品情報 | cinemacafe.net
宇都宮ヒカリ座にて。
大事なことなのになぜか言えない、伝えられない。そんなもどかしさに共感をおぼえるとてもよい映画でした。
史郎がわたしと同年代というのもありますが、史郎を取り巻く日常ひとつひとつの描写がとても丁寧に重ねられていてリアリティを演出していたために、作中の出来事が自分の身にも起きるのではないかと感じてしまうほどでした。
非常にすばらしかったです。
身近な人、たとえば付き合っている彼女や家族という存在は長く一緒にいることで気兼ねなく何でも話せるのが当然だと若かりし頃(学生くらいまで)は思っていました。運命共同体というのはおおげさですが、一緒にいることが多いのですから大事な情報は共有するべきだと考えていたからです。
基本的にこの考えについては今でもそうだと思っているのですが、一方で「ここ一番の大事な話」を身近な人にするのは結構しんどいということを結婚や子どもが生まれる経験をとおして感じるようになってきました。
相手のことはよく知っているだけに、悲しい事実を伝えたら悲しい思いをさせてしまうんじゃないかとか、こんな事実を伝えてしまったらものすごく悩むんじゃないかとか、事実を伝える前に相手の感情を先回りして想像してしまうのです。そうやって考えているうちに、「あー、こんなこと言えねえなあ...」なんて思っちゃって、大事なことをしばらく言えずに一週間くらい経ってしまったりするんですよね。
そういう気持ち、すごく分かるなあ。
でもいつかはみんなに知られてしまうことなのだから、自然と知られたり他の人から伝わってしまう前に「自分の口からちゃんと伝える」ことがすごく大事なんだということをこの作品を観て改めて実感します。
EXILEのAKIRAを主演に据えているということで話題づくりで人を集めようという作品なんじゃないかと甘くみていたのですが、ぜんぜんそんなことはありませんでした。今年の邦画ベスト候補に挙げたいくらいすばらしい作品。
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