「笑う警官」見たよ


ある日、札幌市内のアパートで女性の変死体が発見された。その女性は、ミス道警と呼ばれた美女で、かつての交際相手であった巡査部長・津久井宮迫博之)が容疑者に挙げられた上に、異例の射殺命令が出された。それは、道警全体の汚職を告発する北海道議会が開く「百条委員会」に重要証人として津久井が召喚されていたため、道警上層部が企んだものであった…。そう睨んだ所轄の警部補・佐伯(大森南朋)は、津久井を確保し、翌日開かれる「百条委員会」に無事出席させるミッションに命を懸ける――。佐々木譲の人気警察小説「笑う警官」を原作に、角川春樹が11年ぶりにメガホンを取り、映画化。

『笑う警官』作品情報 | cinemacafe.net

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宇都宮ヒカリ座にて。


自慢じゃないけれどわたしはほめるのがとてもうまくて、その気になれば大抵のものはほめられます。
と言っても、お世辞を言うのが得意というわけではなくて、どんなものにも少なからずいい部分というのはあるわけでそこを見つけて伝えているだけなのです。褒めて伸ばすというのがわたしの教育方針なので、いつもいろんなものをほめることを心がけています。


でもそんなわたしのささやかな特技も、この作品の前には本当に役に立ちませんでした。
ほめるところがまったく見つからない作品というのはもしかしたら初めてかも知れませんが、とにかくテンポも演出もそして脚本も粗ばかり目立っているのが印象的でした。
普段はあまりこういう悪かった部分を明確に書くことはないのですが、せっかく悪いところしか目に付かなかった作品なので思いつくまますべてを書いてみようと思います。

1. テンポがよくない上に脚本も微妙だった

一番びっくりしたのはこれ。とにかくストーリーのテンポがあまりに悪くて編集ミスでもしたのかと心配になるほどでしたし、わたしのような普段は脚本の出来など気にしたことのない人間ですら「本当にこの脚本でよかったの?」と不思議でならないほどの出来でした。


例えば、あのメンバーの中に裏切った人間がいるというのはよいのですが、裏切った理由だとかその背景描写があまりにお粗末で、その行為が物語の流れと無関係といってよいほど影響がないばかりか、主軸の進行を阻害しているとさえ感じました。
ストーリーの文脈から、「一個人が大組織を裏切る際に感じるであろう恐怖心」と「自らの信じる正義を全うしたいという気持ち」との葛藤を描きたかったのかなと思うのですが、でもそれがまったく伝わってこないんですよね。一体何をしたかったのかさっぱり分からないのです。


あと、ラストのやっつけ仕事感には乾いた笑いしか出てきませんでした。
いろいろとネタを仕込んで盛り上げるだけ盛り上げておいて、まさかあんな片付け方をするとはねえ...。
単に大風呂敷を広げすぎて収集がつかなくなっただけなんじゃないかとうがった見方をしてしまいます。

2. 演出が...

全体的にかっこよさの定義がずれているように感じました。
頭にバンダナを巻いて指貫グローブを手にはめて、白のTシャツにケミカルウォッシュのGジャンとジーパンを合わせてしまうような、そんなアンバランスというか時代錯誤感にあふれたというか、とにかくかっこつけたいという気持ちと実態の乖離がひどくてとても気恥ずかしくなるシーンが多かったです。
例えば、オープニングとラストで使われたタイプライターが打たれて文字が表示される(表示されたのは、オープニングでは映画のタイトルで、ラストではTHE ENDの文字でした)のですが、これがもう恥ずかしくて心臓が止まりそうなくらいダサくて思わず吹き出してしまいました。
もう出てくるものすべてがかっこつけたいオーラをまとっているのですが、そのセンスがもうかっこわるくてねえ...。


あと、大森さんが車に乗っているシーンが何度かあったのですがこれが本当にひどかった。雨の中を走っているという設定なので、窓の奥にぼんやりと町の光が映っていて、光が流れていく様子をとおして車が移動していることを表現しているのですが、この光が明らかに円柱をまわして動いているように見せているのが見え見えだったのです。おい!これはドリフか!と突っ込みたい気持ちをを抑えるのに苦労したわけですが、さすがにこれはお金のかける場所を間違っているとしか思えません。


予告はとても面白そうだったので過剰に期待し過ぎてしまったという一面があることは認めますが、それを差し引いてもとてもガッカリ度の高い作品でした。


角川監督にとってはこれが最後の作品になるそうですが(参考)、汚名を返上するためにもぜひもう一作品撮って欲しいとわたしはおもいます。


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