「一瞬の風になれ」読んだよ

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第三部 -ドン- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第三部 -ドン- (講談社文庫)

「速くなる」
ただそれだけを目指して走る。
白い広い何もない、虚空に向かって…………。
春野台高校陸上部。とくに強豪でもないこの部に入部した2人のスプリンター。ひたすらに走る、そのことが次第に2人を変え、そして、部を変える。「おまえらがマジで競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」思わず胸が熱くなる、とびきりの陸上青春小説、誕生。

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昨年さまざまな賞を受賞した作品なのでかなり高い期待をもって手に取りましたが、その期待以上に楽しい作品でした。
好きなことに一生懸命打ち込めることがどれだけ幸せなことなのかを実感でき、また、登場人物たちの交わす言葉のラフな感じが臨場感を演出していてよかったです。3冊を合計すると1000ページ近いボリュームがありましたが、一気に読んでしまいました。


前にもここで書いたことがあるのですが、わたしは中学高校と柔道部でしたが、何で柔道部だったかと言えば当時の体型が柔道に適していたからです。一般の人よりも体脂肪率がやや高めだったわたしは、その体の重さもあって走ることがとても苦手で短距離・長距離問わず大嫌いでした。走るのに限らず、疲れることが大嫌いだったんですよね...。
そんな怠惰な性格のわたしも、働き始めてから1年ちょっと過ぎたくらいから週に数日走り始めました。
最初は健康管理が目的だったのですが、1週間、1ヶ月と続けるにしたがって走る楽しさに目覚めてしまい、5年経ったいまではライフワークと言ってもいいくらいに日常に溶け込んでいます。
走るという行為は道具も何もいらない、今すぐにでも始められる手軽さがありますし、何より少し続けるとその効果があっという間に現れます。足がギュッと細くなるなんていう見た目にもわかりやすい効果もありますし、それ以外にも今までよりも長い距離が走れるようになったり、走るペースを上げても全然疲れなくなったりなんていう変化もすぐにおとずれます。わたしも走り始めたときは2km走ると疲れ果てて動けなくなっていましたが、今だと同じペースで10kmを走ったとしてもシャワーを浴びたらそのまま映画を観に行ったりするくらいの余裕はもてるようになりました。


ところが最近いつもわたしと同じような時間帯に走っている人がいることに気付きました。
コースがまったく同じではないので実際どのくらい走っているのかは分かりませんが、その人の走り方がものすごくかっこよくてものすごく速いんです。ストライドがとても広くて腕の振りもきれいで真似をしたくなるくらいですし、わたしは6kmを30分くらいかけて走るのですがその人のペースはわたしとは比べ物にならないほど速いんです。さすがに2倍とはいいませんが、あっという間に置き去りにされます。
わたしもあんなふうにかっこよく速く走りたいけど、夜にちょいちょい走ってるだけの現状では全然ダメで、きっと彼は昔から陸上をやっていてたくさんの練習を積み重ねないといけないんですよね。
そう考えると、なんで中学高校で陸上をやらなかったんだろうといまさら悔しさがこみあげてくるのです。


走るという行為は非常にシンプルでただ走るだけであれば誰にでも出来るのですが、だからこそ速く走れる人と普通の人の間には絶望的なほどの溝があるように感じられます。
本作は短距離がメインの話でしたが、速く走れることってそれだけ価値のあることだよなという思いを改めて実感したし、速く走れるようになる楽しさも同時に感じました。


もう少し本格的に走る練習始めようかな。