「女の子ものがたり」見たよ


36才の漫画家・菜都美(深津絵里)は、スランプから全く抜け出す兆しのないダメ作家。あきれ果てた新米編集者の財前(福士誠治)にも、友だちがいないことを指摘される始末。しかし、そんな菜都美にも、かつて“女の子”だった頃、いつも一緒にいてくれた友達がいた。海と山の見える小さな町で出会い、自分の全てを受け入れてくれたみさちゃんときいちゃん。菜都美は、大切な友達と一緒に過ごした日々がいまも自分を励ましてくれていることに気づく。そして、彼女の心にある変化が起きる――。人気漫画家・西原理恵子によるベストセラーを原作に、主人公の女性が人生の絶不調から生きる勇気を取り戻していく姿をノスタルジックに描いた感動の物語。

『女の子ものがたり』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。


高校生1年生のとき、ある日の現代文の授業で「20歳になる前にたくさん本を読んでおいた方がいい」と先生が言っていたことを今でも覚えています。彼女曰く、「年を取ったら読めなくなる本があるし、若いうちでなければ共感出来ない本がある」ということでした。
わたしがこの言葉をずっと覚えているのは「本なんていつ読んでも一緒だよ」と反発を覚えたからなのですが、あれから15年くらい経って振り返ってみるとたしかにそういう本があることには同意せざるを得ないのです。昔読んで感動した本を今読み返してみると、当時と同じように感動することはほとんどなくて、当時よりもどこか一歩引いた目線で物語を俯瞰している自分に気付くのです。


そしてそれとは逆に、ある程度成長したり立場が変わらなければ分からない/理解出来ない作品というのもたくさんあり、わたしにとって「女の子ものがたり」はそのような作品でした。


本作品は36才漫画家である菜都美の10代を振り返る作品なのですが、観終えて泣きそうになりました。
とは言っても、10代女子に共感する部分なんかはまったくなかったし、彼女たちの心境を理解することすら難しかったくらいなのですが、一人の少女が歩んだ大人になるまでの道程は、楽しくもあり悲しくもあり、とにかく今まで想像することが出来なかったことがたくさん詰まっていて「あー、うちの子たちもこんなふうに大きくなるのかな」と思ってみていたらもう何だか切なくなってしまったのです。


親が子の成長を想像することはよくあると思うのですが、わたしのように子どもの性別が自分と違う場合、どうもリアルにその成長を想像することが出来ません。それは性別が違うことで、各年代ごとにどんなことを考えたりどんな人間関係を形成しているのか具体的に想像できないからなのです。
当然個人差はありますし、この作品を観たからといって女性の成長過程のすべてを知ったとは思っていませんが、でもここまで具体的なサンプルというのはめったにないので非常に参考になりました。


ただ、この作品は今の自分の立場だからこそここまで思い入れを持ってみることが出来るわけで、例えば自分に娘がいなかったとしたら特に見るところのない凡庸な作品の一つとしてあっという間に記憶から消えていくような作品だったわけです。
そう思うと、今このタイミングでこの作品を観られたことはとてもよかったと思うし、この出会いには心のそこから感謝したくなりました。


あとは大後寿々花がとても作品の雰囲気にあっていて、だからこそ、この作品に子の成長を重ねてみることが出来たのと断言できるほどすばらしい存在感でした。



一昨年のわたしの邦画ベスト作品である「遠くの空に消えた」でもそうだし、半年前に公開された「おっぱいバレー」でもそうなのですが、彼女にはノスタルジックな空気がすごくよく似合います。それは決して風貌が時代遅れだということではなくて、時代や時間に左右されない特別な雰囲気を纏っているからだと思うのです。
わたしは彼女がふとした瞬間に垣間見せる寂しさの感じられる表情が特に大好きでして、この作品でいうときみこと殴り合いのケンカをしたあとに帰途につくシーンで見せた表情がそれに当たるのですが、この表情にこそ彼女がもたらす懐かしさを感じさせる素地の秘密があると勝手に思っています。


彼女の魅力はさておいても非常に楽しく鑑賞出来ました。
子どもの頃は大人になることに憧れます。たしかに大人になることはとても嬉しいし楽しいこともあるけれど、実はこの変化は不可逆変化だということに気付くととても切ない。そんな感覚を久しぶりに思い出させられた作品でした。


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