「夜の朝顔」読んだよ

夜の朝顔 (集英社文庫)

夜の朝顔 (集英社文庫)

なんにもない田舎で暮らす小学生センリ。でも気になることは山ほどある。クラスメイトとの微妙な距離感、となり町での発見、垣間みるオトナの事情…。“明るい子ども”でいるため、言葉にできなかった7つの思い。人生で一番長い6年。小学生センリが初めて知る、不安、痛み、憧れ、恋。『檸檬のころ』で注目を集めた24歳の新鋭が、新しい発見に満ちた日々とほろ苦い成長の過程を、細やかに掬い上げる。

http://www.amazon.co.jp/dp/4087748065

本書の著者である豊島ミホさんが書いた「檸檬のころ」はとても大好きな映画なのですが、実はまだその原作を読んだことがありません。
映画の世界観が大好きなので原作を読むことでその世界観が崩れてしまうのが怖くて手を出せずにいたのですが、この「夜の朝顔」を読んで「檸檬のころ」の原作も読んでみようと決意しました。映画のことはひとまずおいておいても、きっと原作もすばらしい作品だろうという予感というか確信をもつことができました。
こういう臨場感のある文章ってものすごく好き。


本書は小学校1年生から6年生までのいくつかの時期を切り取った7つの短編で構成されているのですが、そのいずれもその年齢特有の匂いを感じさせる内容になっていて、まるで自分が小学生に戻ったかのような気分になりながら読みました。
よく遊んでくれる親戚の兄ちゃんがきた時の嬉しさとか、クラスに自然と生まれるヒエラルキーの気持ち悪さ。そして学校が違うというだけで生じる小学生特有のなわばり意識のような感覚。本書を読んでいるだけなのに、それらひとつひとつの感情が自身の経験と合わさってよみがえってきました。もう感動と言う言葉でも足りないくらいの衝撃を受けました。


著者は秋田出身だそうですが、たしかに爺ちゃんのセリフはかなり濃い秋田弁でして、そこもまたすごくグッときました。
秋田を離れて12年を過ぎましたが、最近はなかなか秋田の言葉がスラスラと出てこない時もあって「自分は秋田の人間ではもうないんだな...」と思うこともあるのですが、こうやって秋田弁を目にしたり耳にしたりするとスッとなじむ感覚があります。


やはり生まれた場所の言葉って特別です。