「Q&A」読んだよ

Q&A (幻冬舎文庫)

Q&A (幻冬舎文庫)

都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。

http://www.amazon.co.jp/dp/4344409361

これ、ものすごくおもしろかったです。
ある事件の真実を調べるために、その場に居合わせたという人たちから彼らの目から見た事件の内容を証言してもらうというそれだけの話*1なのですが、証言から見えてくる事実の怪奇さや不気味さには読み手を強烈に惹きつける力があって、本をおくことなく一気に読みきってしまいました。作品の構成そのものは同著者の「ユージニア」に似ているのですが、わたしはこちらの方が圧倒的に好きです。


主観は完全には排除は出来ない。
そんな趣旨の言葉を本書の登場人物が言っておりましたが、たしかにどんな出来事であっても経験した人がその事実を語る場合には観測者のフィルターを通して語るしかありません。これは本当にそのとおり。
それでも上記の発言をした人は、事件について極力自分が見たことだけを主観を交えないように、とても慎重に、そして大変誠実に事実だけを伝えようとするのですが、それでも結局は何かしらその人自身の人生が負っているもの、負ってきたものが言葉の中に混じってきては影響を与えてしまうのです。
これは本当に怖いことだとわたしは思うのですが、程度の差こそあるけれど他人の言葉には真実ではないことが混じっているということを意味しているし、そしてわたしの言葉にもそういった一面があるということなのです。いわゆる意識的に嘘をついている人よりも、意図して嘘をついていない分余計にたちが悪いように思えてなりません。


人は目に入ったものを見ているのではなく、見たいものを見ているに過ぎないんですよね。
たとえどれだけ意識したとしてもそのフィルターははずせないことは忘れてはいけないと思います。


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ユージニア (角川文庫)

ユージニア (角川文庫)

感想リンク

*1:実際には後日談のようなものもありますが