「向日葵の咲かない夏」読んだよ

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

http://www.amazon.co.jp/dp/4101355517

次々に起こる出来事やハプニングに驚いたり頭を悩ましているうちに話だけはどんどん進んでいくスピード感と、そのスピードに合わせて二転三転する展開が先を容易に読ませてくれなくてなかなか読み応えのある作品でした。
ただ、読者のミスリードを過剰に誘おうという魂胆が透けて見える構成とあまりに意外すぎるラストはどうみてもやりすぎでして、その点は好き嫌いが分かれそうな印象を受けました。


この作品の主人公は小学生、そして舞台は夏休みと非常にわたしの好きな素材を扱っているのですが、どうもこの作品を読んでいても夏らしさは味わえないし作品の世界を楽しもうという気にはなれないのです。作品の中の世界は常に灰色の雲で埋め尽くされているような鬱々とした気分を誘うために夏らしさとは程遠く、そしてまたその世界には気持ち悪さや息苦しさしか感じられないのです。
それでもわたしを引きつける引力が感じられたらそういう作品として受け入れられるのですが、そういう魅力も感じられません。大枠ではわたしの好きそうな題材がそろっている上に意外性もあるのですが、ここまで好ましくは思えない表現や描写だと感じるということは、つまりはわたしとの相性の問題としか思えません。
暗くて不思議な話好きにはお奨めです。


この手の作品の感想ではいつも「葉桜の季節に君を想うということ」をお奨めして終わることにしているので、今回もその例に漏れずお奨めしておきます。


葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

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