車工場で働いている青山勝人(長瀬智也)は、彼女にはフラれ、家賃も滞納し貯金もなく、会社もクビになる。そんなとき、自分が生きられる時間が残り少ないことを知らされる…。どん底の勝人は、病院の中で春海(福田麻由子)という少女と出会う。彼女も、先天性の疾患に骨肉腫を患い、長く生きることが出来ない。性別も年齢も違う2人だが、いつの間にか意気投合。そして2人は、酔った勢いで病院の駐車場から車を盗み出し、脱走する。それは、春海が生まれてから未だ見たことがなく、勝人にとっては思い出が詰まった“海”を目指す旅の始まりだった――。1999年に日本で公開されたドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』が原作。
『ヘブンズ・ドア』作品情報 | cinemacafe.net
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MOVIX宇都宮にて。
予告を観た限りでは結構おもしろそうだったのですが、実際に鑑賞を終えた感想としては残念ながらその期待には及ばずといった作品でした。
短絡的に行動する勝人は観ていてヒヤヒヤするだけでなく、いくら死を目前に控えているとは言え、やりたい目的があるにも関わらず何故あそこまで身の安全に無頓着でいられるのか全く共感出来ませんでした。
そして、本来はその勝人を捕まえたいと思っているはずの警察やある企業グループの間抜けぶりにはもう緊張感を持つことすらバカらしいと思わずにはいられませんでした。ホント、どうしてあんなふうにしちゃったんだろう...。
このうち、前者の勝人の行動については百歩譲って何となくわかるというか、死を目前にしているわけだし脳を患っているわけだしそういう考えもあるよねと思えば納得も出来るのですが、その短絡的な行動を積み重ねているだけの勝人を捕まえられない、というか本当に捕まえる気があるのかどうかすら疑わしいと思わざるをえない追跡者たちのやる気のなさには心底がっかりしました。別に007みたいにものすごくハードにやれとは言いませんが、「夜に正人の所在がホテルだと突き止めたのに捕まえに行くのは夜が明けてから」とか、「勝人が食事をしている飲食店の周囲を包囲しているくせに、中の様子はろくに確認していない」とか、書けばそれだけでもう10行くらい費やせるほど大量のがっかりが散らばっていました。
長瀬も福田も大好きだったので作品に対する期待が大き過ぎたのかも知れませんが、それにしてもちょっとあんまりだったなと思います。
とストーリーについてはあまりほめられる部分がありませんでしたが、映像に関しては非常におもしろいと感じるところが多くて記憶に残っているシーンがたくさんあります。例えば、予告にも使われていた春海が目の上に輪切りにしたレモンをのせて寝転がっているシーンは意味も前後との脈略も感じられないのですがすごくおもしろくて印象的な映像だったし、ラストで勝人が座り込んで酒を口にし、その横で背景の青空よりも濃い目の青い服を着た春海が海を見てたたずむシーンなんかもうものすごくよかったです。
作中で「最後くらいいいエンディングが欲しくなった」といってた勝人の願いそのものを映像として表現しきっていたこのシーンの出来はそれまでの不満を100%吹き飛ばしてしまうほどのインパクトでした。
もう一度観る気は起きないのですが、このエンディングを踏まえてもう一度観たらまた印象が変わるかも知れません。
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