きみにしか聞こえない

きみにしか聞こえない [DVD]

きみにしか聞こえない [DVD]

傷つきやすく内気な女子高生リョウ(成海璃子)。友だちのいない彼女はケイタイも持っていない。でもある日、公園で拾ったおもちゃのケイタイから着信音が鳴る。見知らぬ青年シンヤ(小出恵介)からの電話だった。このときから、リョウとシンヤは空想の電話でつながる。いろいろな話をするうちに、孤独だった2人は少しずつうちとけて、心の距離を近づけていく。シンヤの励ましを受けたリョウは、やがて周囲にも心を開いていくようになり、シンヤもまた、明るい笑顔を多く見せるようになる。だが、ついに2人が会うことになった時、思いがけない出来事が待ち受けていた…。

『きみにしか聞こえない』作品情報 | cinemacafe.net

観終わった瞬間、映画館に観に行かなかったことを心の底から後悔してしまいました。後悔も後悔。大航海時代。近所で上映してなかったとはいえ、なんであの時観に行かなかったんだろう...。
世界観やストーリーは乙一原作らしく、現実に近い世界観でありながらわずかに生じたひずみとも言える出来事から非現実的な展開がくりひろげられていて、それがとてもリアルであり、またファンタジーでもあるという不思議さ。その絶妙なバランスはまさに乙一作品らしいなと感じたし、そんな匂いの感じられる映像ってすごくね?とひとりぶつぶつ言いながら見入ってしまいました。
そんな魅力あふれるシーンの多いこの作品の中でも特に印象に残っているシーンがひとつあって、わたしはそのシーンだけを繰り返し何度も何度も再生して鑑賞しました。どこかというと成海が鎌倉の海でカセットテープに思いのたけを吹き込むシーンなのですが、ここがもうものすごくよくて、10回くらい繰り返し観たけどもう10回は観たいなと思うくらいよかったです。
耳の聴こえない相手に録音してメッセージを送っているという物悲しさと、でも想いを大声で伝えるという行為の清々しさ。そして何よりも成海の凛とした声と大きな声を出しているという開放感あふれる表情がそれはもう果てしなくよくてわたしは取りつかれたように繰り返し再生してしまいました。


リョウとシンヤの間に生じた1時間という時差のもたらす役割についてもしっかり回収されていたし、もうひとりの電話の接続先である原田さんの正体もうまく組み込んでいて、とても満足度の高い結末でした。


そういえば、今朝、買いおきの本の山をながめていたらその中に原作の「失はれる物語」を発見。買った記憶がぜんぜんなかったのでびっくりしましたが、何も考えずにDVDを観る前に読んでしまわなくてよかったです。


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