おろち


100年に一度、永い眠りに就くことによって不老不死の体を保ち、人の世を彷徨い続ける謎の美少女“おろち”(谷村美月)。行く先々で起こる悲劇や惨劇を、時に自らの不思議な力を介入させつつ、彼女は見つめ続ける――。おろちが家政婦として潜り込んだ門前家には、2人の美しい姉妹、長女の一草(木村佳乃)と次女の理沙(中越典子)がいた。誰よりも美しく生まれるが、29歳を過ぎる頃には突然美貌が崩れ、果ては化け物のように醜く死んでいくという彼女たち。ある日、理紗は死にゆく母親の口から、もう一つの門前家の秘密を打ち明けられる…。楳図かずお原作の同名漫画より「姉妹」、「血」というエピソードを基に描かれる怪奇ミステリー。女性の美醜への執着が、美しい姉妹を恐怖と悲劇へと導いていく…。

『おろち』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。
久しぶりに公開初日の初回に映画を観にいってきました。というのも、今日は20日なのでMOVIXは映画が全て1000円均一なのです。そのおかげで映画館のロビーはかなり込み合っていたのですが、この作品を上映する一番奥の5番シアターはけっこう閑散としていてのんびりと観る事が出来ました。
原作は未読ですが、映画版を観たあとに原作がどういう作品なのか読みたくなる作品でした。とてもおもしろかったです。


この作品を観ながら、美しかった女性が29歳を過ぎると突然醜くなってしまうというのはいったい何を意味しているのかとても考え込んでしまいました。


美しさというのは遺伝、つまりは天性によるものが大きく影響するし、つまりは手に入れがたいものであるためにそれをもたない人にとって羨望の対象となります。作中でも門前葵や一草はその美を活かして女優として活躍して財を築き、多くの人からの羨望をあつめていたわけです。
また、羨望するにとどまらず嫉妬心を抱く人も少なからずいるのだろうと思います。他人の活躍や成功を素直に喜べる人ばかりとは限りませんし、むしろ他人の不幸の方が話の種として好まれる傾向にあるというのは、噂話レベルのニュースが垂れ流されているワイドショーがいまだになくならないことや、ゴシップ記事ばかりの雑誌がいまだに廃刊にならず続いていることからも明らかです。


つまり、あまりに圧倒的な美しさは他人からさまざまな形で注目を浴びる理由となり、その多くの人から受ける多様な感情というものが門前家の女性に何か影響を与えているのかなと考えたのです。
そしておもしろいなと思ったのは、そういった負の感情が外部からだけではなく身内同士で向け合うことすらあるということです。
結局、門前家の血だとかそういうことが問題じゃないんだろうなー。


それと、この作品を観てよかったなと思ったのは谷村さんが居酒屋で歌を歌うシーンがあったということです。やけにかわいい衣装に身を包み、居酒屋を回って歌を歌わされるというシーンだったのですが、やけに場に馴染んでいておかしかったし、歌も予想外にとてもうまくておどろきました。おもいっきり練習したのか吹き替えなのか分かりませんが、彼女が歌っている姿を初めて見れたのはよかったです。


谷村さんつながりで話を続けますが、今回演じた人の死を見つめ続けるおろちという役に挑戦して演じきっている姿を見ていると、彼女のチャレンジ精神には感心しています。「ユビサキから世界を」では砂の中に埋められて這い出てきたし、「魍魎の匣」では両手足をきられちゃう役だったし、「死にぞこないの青」ではアオの役にも挑戦しています。
これからもその貪欲さはもっていて欲しいし、その姿勢でいる限りは彼女の出演作は出来る限りみようと思います。


そういえば、普段であればエンドロールはほとんど見ずにエンドロールが始まったらすぐに席を立って帰るのですが*1、今回は始まると同時に聴こえて来た聴き覚えのある声にはっとさせられて最後まで席を立つことが出来ませんでした。


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そうなんです。エンドロールで流れてきたのは柴田淳の新曲でした。
最近、新譜のチェックとかぜんぜんしていなかったので、柴田淳が新曲を出していたことも、まして映画とタイアップしていたこともまったく知りませんでした。完全に不意打ち。
この作品を観終わったときにつくづく感じていた人間の業や欲の深さ、そしてそんな人間たちが生死を繰り返すこの世の無常さ。柴田淳の悲しさを含んだ歌声はそんな現実へのやりきれない想いを増幅するようでもあり、でも彼女の歌声を聴いていると何だか救われるような気にさえなってくるのです。
とてもよい曲なので、すぐにiTune Storeで買おうと思います。


公式サイトはこちら

*1:なるべく他の人の邪魔にならないように帰るために普段は「ほぼ中段」で「出口寄りの一番通路側」の席を取るくらい徹底しています。そのくらいエンドロールは観ないつもりでいます。