- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1990/11/20
- メディア: 文庫
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たった170ページほどのこの単行本を読むのに一週間もかかってしまいました。これほど読むのが苦痛に感じられる作品は久しぶりでしたので、途中で読むのをやめようとさえ思ってしまいました。170ページと言うとそれはそれで、たいそうな量のように感じられますが、青空文庫のサイトに載っている全文をながめるとこんな程度の量の文章を読むのに一週間もかかったのかと驚いてしまいます(ここで読めます)。
この本を読み終わって感じたのは、自己評価が不当に低過ぎることがいったいどれほど悲劇なのかということと、一見どうしようもないとしか言いようのない非常識な人間と感じられた葉蔵の考えや行動の中にも、少なからず共感出来る部分が自分自身にもあるという事実です。
決して美化することなく淡々と語られていく葉蔵の半生をとおして、恥ずかしくて思い出したくない自分の過去が思い出されてしまったのが読み進めることを躊躇してしまった理由かも知れません。何にしてもえぐい作品でした。
なぜ太宰治がこの作品を最後に遺して逝ったのか。
読み終えてからそのことについてずっと考えているのですが、自伝を書きたがる人が後を絶たないように自らの生き様をあえて文字として残さずにはいられなかったのではないかとか、実は葉蔵の人生こそが彼があこがれた生き方だったのではないかとか思うのですが、どれもなんだか納得いかないのです。
もう一度読めばまた違う見え方もあるのでしょうが、もう二度と読みたくないのでこれ以上考えるのはやめておきます。