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私が一番好きな小説は何かと言われれば、この「流転の海」を挙げます。もう何度読んだか分からないくらい繰り返し読みましたが、いまだに飽きることなく繰り返し手にとっては目を通しています。実はこの作品、まだ完結していないのですが、年に一回夏休み時期に出版されている全巻を通読するのを習慣としています。
今年で12年になるのでもう年単位でのライフワークと言っても過言ではありません。
初めてこの本を手にしたのは、私が高校3年生の夏休みでした。
当時週刊マガジンで連載していた「Boys Be」によると、高校生活最後の夏休みというとウヒヒな思い出作りにいそしむものらしいのですが、もちろん私にはそんな楽しい思い出など特になく、それまでの夏休みと何ら変わらない平凡な50日を過ごしました。
そんな私のささやかな楽しみといえば、家から歩いて10分ほど行ったところにある突堤に本を持っていき、テトラポッドの上で寝転びながらその本を読むことでした。潮の匂いをかぎながら、波の音を聞きながら本を読むのがとても好きでした。晴れた日には、近くの本屋で適当な文庫本を買っては海へと足を運びました。本を読んで日焼けし過ぎたのは後にも先にもこの時だけです。
本を買うのはいつも家の前にある本屋と決まっていました*1。
遠藤周作と三浦綾子がとても好きだった影響もあって、本屋に行くと最初に行くのは新潮文庫のコーナーでした。
いつもは背面の紹介文を読んで買う本を決めていましたが、ふと200ページくらいの本だとすぐに読み終わってしまうのでちょっと厚めの本を買おうと手にしたのがこの「流転の海」でした。宮本輝と名前は知っていましたが、彼の著書はこれが初めてでした。
そしてその本を買っていつもどおり本を手に海へと行ったのですが、あまりに面白くて午前中に読了。続きが読みたくて午後に第二部を買いに本屋へ足を運んだのですが、文庫にはまだなっていなくて本屋には置いていませんでした...。
その後もその本の続きが読みたくて本屋に行くたびに入っていないかどうかチェックしたのですが、結局第二部に出会えたのは大学に入学してからでした。その後発行年数を調べた限り、5年に1冊ペースで文庫化されているというのがわかったので来る5年後に備えるべく、毎年一度は通読する習慣が出来たのです。
それにしても5年/冊というのはあまりに長いスパンでして、読み始めたのが高校生の時だったのに30歳になった今でも終わっていないというのはこれはすごいことだなと。本当にそう思うわけです。実際に著者である宮本輝氏もそう思っているらしく、4部の巻末にこのように記されています。
「流転の海」という長すぎる小説を書きだしてちょうど20年が経ち、私は55歳になった。松坂熊吾の年齢に私は近づいている。
こんなに完結に長期間を要すると知っていたら、最初から読まなかったのだ、これは読者に対する詐欺といわれても致し方なかろうというお叱りの手紙がときどき送られてくる。
私は返す言葉がなく、ただ頭を下げて謝罪するしかない。
昭和50年代から書かれているようなので実際には25年前から続きが出るのを楽しみにしていた人がいたようです。その人たちに比べれば、私はまだ12年しか待っていませんし、寿命が尽きるのが先かそれとも本が出るのが先かというチキンレース状態にはならずに済みそうです。
# ちなみに一巻の時点で80歳のじいちゃんから早く終わらせてくれという手紙が来たという話が書いてあってちょっと切なくなりました。
かなり分厚い本が5冊とボリュームはありますがそんなのはまったく気にならないほど、むしろもっと読みたくなること間違いなしです。
本書の主役である熊吾は、異常に頭がきれる上に行動力や度胸もあり、さらには人情味にあふれる人物であるのですが、このように社会的成功を収めるファクターを有する彼が不運によって凋落していく様子をみるにつけ、人生のきまぐれさというか優れていることがベストではない難しさをひしひしと感じられるのです。また、彼をとりまく人物もまた魅力あるキャラクターが多くて心惹かれます。
果たして熊吾はどのような終世を迎えるのか。
最終巻となる6部が早く出ないかと、今から首を長くして待っています。あと5年も待てないよ...。
*1:それなりの本屋がそこしかなかったという事情もあるのですが