蹴りたい背中

蹴りたい背中 (河出文庫)

蹴りたい背中 (河出文庫)

私は映画がすごく好きだけれど、その理由のひとつにさまざまな人の視点を経験出来るからということが挙げられます。例えば、時にはゾンビに追いかけられる子どもだったり、時には超ラブリーな女の子と仲良くなる男の子だったり、時には人間ですらなかったりと、とにかくいろんな視点を疑似体験することが出来るわけです。


さて。
このように映画が映像を通して多くの世界を見せてくれるように、この本は文字を通してある世界を見せてくれます。その世界とは一人の女子高生から見た学校と言う世界。友達と群れることを極端に嫌ったり、でも一人でいることに寂しいと感じているそんな女の子から見た学校がどのようなものなかという事を非常に生々しく描いています。
読んでいてすごく不思議だったのですが、視点をトレースするという生易しいレベルじゃなくて、もうその場にいて自分が見ているんじゃないかと思うくらいその場の空気が伝わってくるのです。何だろうね、この生々しさ。正直に言うとこのリアルさはあまり気持ちのよいものではなかったけれど、でも場の空気/雰囲気も伝わってくるような描写のうまさはすごいなと感心しました。


それにしても、まさか本当に背中を蹴る話だと思っていなかったので驚きました。