ダージリン急行


インドを駆け抜ける列車・ダージリン急行に、長男・フランシス(オーウェン・ウィルソン)の呼びかけで、次男・ピーター(エイドリアン・ブロディ)、三男・ジャック(ジェイソン・シュワルツマン)のホイットマン3兄弟が集まった。父の死をきっかけに1年の間絶交していた彼らは、それぞれに問題を抱えていた。会えば口論し、掴み合い、いがみ合う3人。しかしこの旅には目的があった。それは行方不明になった母親を探すこと。かくして、3兄弟の心を癒すインド横断の列車の旅が始まった――。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の新鋭ウェス・アンダーソン監督が、インドのスピリチュアルな景色に乗せて贈る、家族の愛と絆の物語。

『ダージリン急行』作品情報 | cinemacafe.net

MOVIX宇都宮にて。
普段は離れて暮らしている兄弟3人が、インドに集まり、ダージリン急行に乗って母親に会うために旅する物語。


急行での長旅という、それだけで乗り鉄にはキュンとくるテーマなのですが、単にいいテーマを掲げただけに留まらず映像もすごくよくて、古ぼけた急行車中の風景がやけになつかしかったり、香辛料の匂いが漂ってきそうなインド特有の風景が印象的な作品でした。観ているだけで私も急行でインドを旅したくなってきました。


また、ストーリーや構成もすごくよくて、冒頭、長男フランシス以外は全員この旅には乗り気じゃなくて一刻も早く帰りたいと喚いているというグダグダな状態から始まるわけですが、そこから繰り広げられる些細ないさかいや人生を変えるようなハプニング、そういったイベントごとを介して兄弟の絆が修復されていく流れがすごく楽しかったです。


正直に言うと、最初の10分くらいはあまりにつまらなくて、観るのを止めて帰ろうかと思ったくらいでした。
ですが、そこを乗り越えてエンドロールで「オー・シャンゼリゼ」が流れてきた時には思わず涙が出てしまったくらい作品にのめり込んでしまいました。映画観てこんなに泣いたのは久しぶりです。


当初、離れ離れだった彼ら(3兄弟)の心を再び結びつけたのは、母親との再会ではなく、一緒に過ごした時間だったと私は思います。
フランシスが無理やりでもあちこちに連れて行き、一緒の時間を過ごし、いいたい事を言い合った自然な結果としての絆の再生。私がここまでこの作品に惹かれたのは、乗り鉄だからではなくこの男兄弟の良さという部分に魅了されたからです。


当初の目的はともかく、男兄弟で何となく旅をするというのはすごくいいな〜と思います。
この作品のように、アテンダントをトイレに連れ込んで楽しい事は出来ないかも知れないし、毒蛇を買って来て逃げられるなんて事も出来ないかも知れません。まして、電車が道に迷うなんて事は絶対に起こらないだろうし、この作品のようにハプニングが多い旅にはならないかも知れませんが、それでもただただ一緒の時間を同じ場所で過ごす事って頭で考えているよりももっと大きな意味があるんじゃないかと思うのです。


フランシスは作中でこの旅行の事を「Spiritual Journey」と表現していますが家族の絆を再生させるという観点からするとなかなか面白い表現だと思いました


私も「Spiritual Journey」してみたい!!


公式サイトはこちら


[追記]
そういえばこの作品の冒頭でジャックが出てくるショートムービーが流れるのですが、最初はあまりに意味不明で??となってしまいました。
この伏線も途中で回収してくれたのは非常によかったです。