消え行く風景

本日(2007/11/30)で宇都宮市の中心部にある「宇都宮第一東宝」が休館しました。再開のめどが全くないそうなので、実質的な閉館のようです。

また一つ、市中心部から銀幕の歴史が消える――。宇都宮市池上町にある映画館「宇都宮第一東宝」が今月末、約60年の歴史に幕を下ろす。郊外のシネコン(複合映画館)に客を奪われ、経営が困難となった。同館で半世紀以上、映写機を回してきたベテラン技師も休館と同時に引退する。

http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000000711210004

四十年間にわたり地元の映画館として映画ファンに愛されてきた宇都宮市池上町の映画館「宇都宮第一東宝」が十一月末で休館することが八日、分かった。同じビル内の別のテナントが営業を続けているため、当面取り壊しなどはないが、再開のめどは立っていない。

 同館は、合資会社第一東宝が一九六七年から営業開始。「第一東宝」「ニュー東宝」「ニュー東宝2」の三スクリーンがあり、座席数は計七百二十九。現在は「HERO」や「クローズド・ノート」など、人気の三作品を上映している。

 アニメ「千と千尋の神隠し」が公開された二〇〇一年には、約三十五万三千六百人の観客動員を記録。だが〇五年に、シネコン「TOHOシネマズ宇都宮」が市内に完成すると、約五万八千九百人に激減。昨年は約三万九千六百八十人まで落ち込み、ずっと赤字が続いていたという。 (佐藤あい子)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20071009/CK2007100902054987.html

そして、これに続くように同じく宇都宮市内にある「宇都宮テアトル」も来年1月(2008/1/25)に休館するそうです。これまた再開の予定は無いので閉館です。たしかにいつ行ってもそれほど混んでいた記憶が無いのでそうだよなと思う一方、かなりショックを受けました。


この二つの映画館は私が宇都宮で初めて映画を見に行った映画館です。宇都宮テアトルではサイレントヒルを、第一東宝ではゲド戦記を見たのはわずか一年前の事です。その日から映画のある日常が始まり、今では映画は私のライフサイクルの一部となりました。どんなに仕事が忙しくても、週に2本は必ず映画を見に行くようになりました。家族とのふれあい以外で私の生活を支えているものがあるとすれば、それは間違いなく映画を見ることだと言えます。そのきっかけを与えてくれたのはこの2館だったのです。


単館系の作品をセンス良く選んで上映してくれた宇都宮テアトル。都内に行かなければ見れなかったような作品も上映してくれたのは本当に助かりました。ポイントカードもお得感があってすごく利用させてもらいました。
そして限られた上映作品の一つとして虹の女神を選んでくれた第一東宝。この作品がなければきっとここまで映画を好きにはならなかったと断言出来ます。劇場のある5Fまで螺旋階段を歩いて上っていくのが、何だか気分が高揚させられていくようですごく好きでした。


今年見た約80作品のうち、40作品はこの2館で見たというくらい、いつもいつも利用させていただいていました。そのどちらも一緒になくなってしまうことはとても寂しいのですがこれもまた時代の流れなのでしょう。


今日、前作を見たことがない「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を見に行ったのは、今日で閉館となる第一東宝の最終回に行きたいというただその願いからでした。この映画館の最後の上映に立ち会いたいという一心で行ったのですが、同じ事を思っている人が居たのか、いつも以上に人が入っていて驚きました。歴史ある映画館だけに子どもの頃に来た事があるとかそういう思い出のある人が多かったのかも知れません。普段からこれくらい人が入っていればなあ〜と思ったのはきっと私だけではないはずです(笑)


上映後に劇場を出るとスタッフの方々が居並んで、「ありがとうございました」と声をかけていましたが、あのこれが最後なんだという空気には胸がつまされる想いでした。「こちらこそ今までありがとうございました」という気持ちを抱えて帰ってきました。


大事なものが風景の中から消えていく辛さ。
それを自然淘汰と片付けるのではなく、そうならないように何か自分に出来ることが無いか考えています。