ホワイトカラーは給料ドロボーか?

ホワイトカラーは給料ドロボーか? (光文社新書)

ホワイトカラーは給料ドロボーか? (光文社新書)


テーマ自体は非常にセンセーショナルで分かりやすいのですが、結局このテーマへの答えは本書の中では出ていません。


当たり前の話ですが、ホワイトカラーと一口に言ってもその職種や能力は千差万別ですから、どれをサンプルとするのか(平均値か中央値かランダムに抽出したデータか)によって得られる結果は異なるでしょう。さらにその選び出した結果を国内のブルーカラーや諸外国のホワイトカラーと比較すると言うのは、やるだけは簡単でしょうが根拠を伴う結果となるとそう簡単には出せるわけがありません。


そんなわけでメインテーマを語るのは難しかったようで、前半であっさりとその答えの導出を諦めてしまっているようです。
その代わりに本書では国際的なレベルで日本のホワイトカラーの労働生産性は良くないの?っていう話と一時期話題になったWhite Color Exception(以下面倒なのでWCE)についてが主として書かれています。


まずホワイトカラーの労働生産性についてですが、日本の生産性は決して低くないと筆者は述べています。この生産性の高さ(というか低くない)の要因となっているのは以下の2点。

    1. 一部の優秀な労働者が自己の能力を存分に発揮している
    2. ↑の優秀な労働者がサービス残業をして仕事をこなしている


サービス残業して仕事をこなさないといけない時点で労働生産性が過大に見積もられているのではないかという気がするのですが、そんな事は瑣末だと言わんばかりになかば強行に話を進めるところが強気で素敵です。


結局。
いろいろと生産性がどうのこうの話が出ましたが、まとめてしまうとパレートの法則どおり優秀な人がいるからこその生産性なんだよって事なんですよね。
ただ、2割の優秀な人材が頑張って8割の仕事をこなしているからこそ日本全体の労働生産性は悪くないという事であれば、結果としては一部の人に頼りきりという危うい状況だとも言えます。パレートの法則では優秀な2割が居なくなったらその残った8割の中でもまた20:80に分かれると言われていますが、その新しい2割では、相対的に元居た優秀な2割をカバーする事は保証されません。結局人数が減っている分、純粋にパワーダウンしてしまうおそれが常について回ります。
# そもそもパレートの法則を根底に置いている限りは回避出来ない問題なわけです


この事実を元に考えて、現状のままでWCEを導入してしまうと今仕事の8割を受け持っている2割にさらに仕事が覆いかぶさって生産性を低下させ、全体としても生産性が下がってしまうという事を筆者は危惧しています。
つまりすぐにWCEを導入するのではなく、優れた人材がつぶれないような環境、すなわち今まで全体の2割分しか仕事をしていなかった8割の人間がもっと生産性を上げる環境を作るべきだと主張しています。
その方法として、評価制度やFA制度など具体的にいくつか提案をされており、それぞれが実際にどのような効果を期待しているのか非常に面白いなと感じました。やる気のある人のやる気はそのままに、やる気の無い人の生産性を上げる工夫がこれからは必要のようです。


今後、こういった状況改善がされるのかどうか。それが日本全体としての生産労働制を上げられるのかどうかのターニングポイントなのは間違いなさそうです。


それと余談だけどちょっと言及。

働きすぎのホワイトカラーの男性において、とくに懸念されるのがいわゆる「セックスレス」の急速な進行である。
近年では、日々の激務に疲れきって、女性と恋愛することすら億劫と感じる若者が増えているという。

...

性欲は、食欲や睡眠用kなどとともに、人間の本源的な欲求のひとつである。その欲求がなくなってしまうほどに、ホワイトカラー男性は日々の仕事に疲れきってしまっているのだ。


104ページ〜


忙しくて死にそうな時って、生命の危機を感じてか子孫を残そうと性欲が増大するなんて話があったのですが、あれは都市伝説なんでしょうか。個人的には思い当たる節もあったので非常に納得してました(笑)


出生数の月ごとの統計を逆手にとって子どもを作った月を調べれば...なんて思って調べて見ましたが、月ごとの出生数なんてほとんど変わらないんですね。


http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2007/06.html


疲れたときは性欲増大説は都市伝説という事で。